相(アスペクト)

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ヘイソウ語では5種類の相を動詞の活用によって表す。
相接尾辞の位置は語幹の直後であり、その後ろに他の文法範疇を表す接尾辞がさらに続く。

態 - 語幹 - 相 - 時制 - 極性 - 証拠性 - 法 - 一致

相の名称と接尾辞は以下の表の通り。

接尾辞
単純相
結果相 -sio
経験相 -uu
進行相 -ay
習慣相 -low
時制 接尾辞
現在 -t
過去 -r
未来 -kh

単純相

単純相は最も基本的な相であり、形態的には接尾辞を伴わない無標形式によって表される。 単純相は、事態を一つのまとまりをもつ出来事として把握し、その内部時間構造(進行過程)や反復性、結果状態には焦点を当てない。 単純相は、事態を全体的に提示する相であり、完了や結果状態の成立を明示的に表すものではない。 そのため、動作動詞では完結的に解釈されやすい一方、状態動詞では単なる状態描写として解釈される。

単純相 × 現在

現在時制では、基準時点を発話時点に一致する一点として設定する。 このとき、事態を開始から終了までを含む一まとまりの出来事として把握する単純相と、その点的な基準時点とのあいだには整合性の問題が生じる。
すなわち、事態全体を捉えるには時間的広がりが必要であるのに対し、現在時制は本来的に時間的広がりをもたないためである。
この不整合を解消するため、単純相現在時制では基準時点の解釈が拡張され、特定の時点に限定されない一般的・普遍的な事実や性質を表す用法が成立する。

(1)

row ngo ceyoy khuitelhe

row-Ø

ngo

cey-oy

khui-Ø-te-lhe

水-NOM.INAN

0

℃-INS

凍る-SIMP-PRS.DIR-3.INAN

「水は0℃で凍る」

典型的には、性質や状態を表す述語においてこの用法が現れる。 これらは特定の時点に局所化されにくく、時間的に広がりをもつ性質として解釈されるためである。

(2)

dikene fashianuu fotede

dike-ne

fashianu-u

fo-Ø-te-de

1-NOM.AN

リンゴ-ACC.INAN

食べる-SIMP-PRS.DIR-1.AN

「私はリンゴを食べる」

この文は、発話時点において実際に食事行為が進行していることを表すものではない。 むしろ、「リンゴを食べる」という行為が話者の性質として成立していることを表す。

この解釈は、以下のような含意を伴うことが多い:

  • リンゴを摂取することが可能である(能力・許容性)
  • リンゴを食べることに対する恒常的な制約(嫌悪・アレルギーなど)が存在しない

さらに、このような性質的解釈は、結果として低頻度の反復(弱い習慣)を含意する場合がある。 ただし、この反復性は習慣相によって明示されるものではなく、あくまで一般的性質の帰結として推論されるにとどまる。

単純相 × 過去

過去時制では、基準時点が発話時点より前に設定され、その過去の基準時点において一まとまりの出来事として把握される事態が成立したことを表す。

(3)

roypay thoyuy 'oghone ce tareke

roypa-y

thoy-uy

'ogho-ne

ce

ta-Ø-re-ke

昨日-GEN

パーティー-LOC

3-NOM.AN

ADD

いる-SIMP-PST.DIR-3.AN

「昨日のパーティーには彼もいたよ」

単純相 × 未来

未来時制では、基準時点が発話時点より後に設定され、その未来の基準時点において一まとまりの出来事として把握される事態が成立すると予測されることを表す。

(4)

tejue khipay gia zhawi'o takhelhe

tejue-Ø

khipa-y

gia

zhaw-i'o

ta-Ø-khe-lhe

打ち合わせ-NOM.INAN

明日-GEN

11

時-ABL

ある-SIMP-FUT.DIR-3.INAN

「明日は11時から打ち合わせがある」

また、文脈によっては、当該事態が発話時点においてすでに開始されているが、将来的に完結する予定であるという解釈をとることもできる。 ただし、この場合も焦点はあくまで事態全体の成立にあり、進行中の過程そのものは明示的には表されない。

(5)

dikene khinawa dii 'aydhuu loyvekhede

dike-ne

khinaw-a

dii

'aydhu-u

loyve-Ø-khe-de

1-NOM.AN

来週-ALL

DEM.PROX

課題-ACC.INAN

終える-SIMP-FUT.DIR-1.AN

「来週までにこのレポートを仕上げる」

結果相

結果相は、ある事態の完了によって生じた結果状態に焦点を当て、基準時点においてその結果状態が成立していることを表す。
ここで焦点となるのは事態そのものではなく、その帰結としての状態である。

結果相 × 現在

現在時制では、基準時点を発話時点に一致する一点として設定し、発話時点において結果状態が成立していることを表す。

(6)

khookui sisiotelhe

khookui-Ø

si-sio-te-lhe

窓-NOM.INAN

開く-RES-PRS.DIR-3.INAN

「窓が開いている」

結果相 × 過去

過去時制では、基準時点が発話時点より前に設定され、その過去の基準時点において結果状態が成立していたことを表す。
当該結果状態が発話時点においても維持されているか否かは規定されない。

(7)

nalui'uy, nay zeydu jawsiorelhe

nalui-'uy

nay

zeydu-Ø

jaw-sio-re-lhe

その時-LOC

DEM.MED

橋-NOM.INAN

壊れる-RES-PST.DIR-3.INAN

「当時、その橋は壊れていた」

結果相 × 未来

未来時制では、基準時点が発話時点より後に設定され、その未来の基準時点において結果状態が成立していると予測されることを表す。
当該結果状態が発話時点以前にすでに成立しているか否かは規定されない。

(8)

'osene khipay thezew'uy ngue ghisiokhike

'ose-ne

khipa-y

thezew-'uy

ngue

ghi-sio-kh-i-ke

3-NOM.AN

明日-GEN

朝-LOC

すでに

着く-RES-FUT-INFER-3.AN

「明日の朝には彼女はもう到着している」

経験相

経験相は、ある種の事態が少なくとも一度は成立したという経験の有無に焦点を当て、基準時点までの期間における事態の生起経験を表す。 個々の出来事の時点や回数は通常、明示されない。

経験相 × 現在

現在時制では、基準時点を発話時点に一致する一点として設定し、発話時点までの期間において当該事態の経験があることを表す。

(9)

dikene piushuy 'u'uutede

dike-ne

piush-uy

'u-'uu-te-de

1-NOM.AN

ピウショ-LOC

住む-EXP-PRS.DIR-1.AN

「ピウショに住んだことがある」

経験相 × 過去

過去時制では、基準時点が発話時点より前に設定され、その過去の基準時点までの期間において当該事態の経験があったことを表す。 その経験が発話時点においても有効であるか(記憶・能力などとして保持されているか)は規定されない。

(10)

dikene nalui'uy nalhuu so'uurengude

dike-ne

nalui-'uy

nalhu-u

so-'uu-re-ngu-de

1-NOM.AN

その時-LOC

そのこと-ACC.INAN

聞く-EXP-PST-NEG.DIR-1.AN

「当時はそんなこと聞いたこともなかった」

経験相 × 未来

未来時制では、基準時点が発話時点より後に設定され、その未来の基準時点までの期間において当該事態の経験が成立していると予測されることを表す。 これは「その時点までに少なくとも一度は経験するだろう」という含意を持つ。

(11)

dikene tovayzie sewa khayu'uukhide

dike-ne

tovayzie

sew-a

khayu-'uu-kh-i-de

1-NOM.AN

30

歳-ALL

結婚する-EXP-FUT-INFER-1.AN

「30歳までには結婚するよ」

進行相

進行相は、事態の内部時間構造における進行中の段階に焦点を当て、基準時点において当該事態が未完了のまま進行中であることを表す。 また、進行相が状態動詞と共起した場合、状態の内部時間に焦点を当て、基準時点においてその状態が継続中であることを表す。

進行相 × 現在

現在時制では、基準時点を発話時点に一致する一点として設定し、発話時点において動作が進行中であることを表す。

(12)

'oghone fiu'uy theyu jitodiayteke

'ogho-ne

fiu-'uy

they-u

jitodi-ay-te-ke

3-NOM.AN

今-LOC

本-ACC.INAN

読む-PROG-PRS.DIR-3.AN

「彼は今、本を読んでいる」

進行相 × 過去

過去時制では、基準時点が発話時点より前に設定され、その過去の基準時点において動作が進行中であったことを表す。
このとき、当該動作が発話時点において継続しているか否かは規定されない。

(13)

dikey muo'a ghiregu'uuli, 'osene thetowi foguu va'ayreke

dike-y

muo-'a

ghi-re-gu-'uuli

'ose-ne

thetow-i

fogu-u

va-'ay-re-ke

1-GEN

家-ALL

着く-PST-NMZ-TEMP

3-NOM.AN

夕方-GEN

食事-ACC.INAN

作る-PROG-PST.DIR-3.AN

「家に着いたとき、彼女は夕食を作っていた」

進行相 × 未来

未来時制では、基準時点が発話時点より後に設定され、その未来の基準時点において動作が進行中であると予測されることを表す。
このとき、当該動作が発話時点において既に開始しているか否かは規定されない。

(14)

dikethone khipay dilui'uy khemiilhu'uy zeitaykhede

diketho-ne

khipa-y

dilui-'uy

khemiilhu-'uy

zeit-ay-khe-de

1PL-NOM.AN

明日-GEN

この時間-LOC

飛行機-LOC

乗る-PROG-FUT.DIR-1.AN

「明日のこの時間、私たちは飛行機に乗っている」

習慣相

習慣相は、ある種の事態が反復的・規則的に生起する傾向に焦点を当て、基準時点においてそのような習慣的傾向が成立していることを表す。
ここでいう習慣は個別の出来事ではなく、時間的に拡張された性質として捉えられる。

習慣相 × 現在

現在時制では、基準時点を発話時点に一致する一点として設定し、発話時点において当該事態が習慣的に生起する傾向があることを表す。

(15)

dikene sibiotheze'uy durivuu folowtede

dike-ne

sibiotheze-'uy

durivu-u

fo-low-te-de

1-NOM.AN

毎朝-LOC

パン-ACC.INAN

食べる-HAB-PRS.DIR-1.AN

「私は毎朝パンを食べる」

習慣相 × 過去

過去時制では、基準時点が発話時点より前に設定され、その過去の基準時点において当該事態が習慣的に生起する傾向があったことを表す。
その習慣が発話時点においても継続しているか否かは規定されない。

(16)

tuy lui'uy, dikene sibiopa'uy lhetio'uy tawkhaykoy porelowrede

tu-y

lui-'uy

dike-ne

sibiopa-'uy

lhetio-'uy

tawkhayk-oy

pore-low-re-de

子供-GEN

とき-LOC

1-NOM.AN

毎日-LOC

公園-LOC

友達-INS

遊ぶ-HAB-PST.DIR-1.AN

「子供のころ、毎日公園で友達と遊んでいた」

習慣相 × 未来

未来時制では、基準時点が発話時点より後に設定され、その未来の基準時点において当該事態が習慣的に生起する傾向が成立していると予測されることを表す。

(17)

'osene khisuyo ditio'uy neelowkheke

'ose-ne

khisu-yo

ditio-'uy

nee-low-khe-ke

3-NOM.AN

来月-ABL

ここ-LOC

働く-HAB-FUT.DIR-3.AN

「彼女は来月からここで働くことになる」