証拠性
ヘイソウ語では3種類の証拠性を動詞の活用によって表す。
証拠性接尾辞の位置は肯定文では時制接尾辞の直後、否定文では否定接尾辞の直後であり、その後ろに他の文法範疇を表す接尾辞がさらに続く。
証拠性の名称と接尾辞は以下の表の通り。
| 証拠性 | 接尾辞 |
|---|---|
| 直接証拠 | -Ø |
| 伝聞証拠 | -o |
| 推論証拠 | -i |
証拠性の選択は、事態の真偽ではなく、話者の認識における情報源の性質を反映する。
直接証拠
直接証拠は話者が事態を直接知覚した、または直接的経験に基づいていることを示す。
直接証拠は接尾辞を伴わない無標形式で示される。 形態的には何も現れないが、「証拠性なし」ではなく、「直接証拠が選択されたもの」として解釈される。 直接証拠は伝聞・推論証拠と明確に対立するため注意。
2人称及び3人称主語の感覚・感情を表す文においては、直接証拠の使用は不自然となる傾向がある。
これは、直接証拠が話者による直接的経験や知覚に基づく情報源を標示するのに対し、他者の感覚・感情は原則として話者が直接知覚できないためである。
そのため、このような文では、伝聞証拠または推論証拠が用いられるのが自然である。
伝聞証拠
伝聞証拠は話者が他者から得た情報に基づいていることを示す。
推論証拠
推論証拠は話者が観察された事実や知識に基づいて推論したものであることを示す。
従属節における証拠性
証拠性は準動詞形(名詞化形・接続形)では失われ、主節でのみ明示される。
証拠性の帰属先
証拠性は文のタイプによって以下のように異なる対象に帰属する。
- 平叙文:話者
- 疑問文:聞き手
- 引用節:引用節内の話者
物語における証拠性
物語の地の文においては、通常の発話状況における制約とは異なり、2人称・3人称主語の感覚・感情に対しても直接証拠が用いられることがある。
物語において語り手は登場人物の視点や意識に同一化し、その感覚・感情をあたかも直接経験しているかのように提示することができる。 このような用法では、直接証拠は実際の知覚経験を示すというよりも、語りの視点が当該人物の内部に位置していることを標示する機能を持つ。
したがって、物語文脈における直接証拠の使用は、情報源の種類というよりも、語りの視点配置に関わる現象として解釈される。